忍者ブログ

Bitter Cafe

苦くて渋くて辛くて酸っぱい日記

2025/01    12« 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31  »02
私は東京の大学に行っていたけど、長期休みはだいたい地元に戻ってきていた。
長期の休みを利用して、わざわざ地元のタイプスクールで英文タイプを習った。
そのタイプスクールのパンフレットには、小さい丸の中に代表者の顔写真が収まっていた。
やがてそのタイプスクールは、時代の流れに沿って、ワープロ、パソコンへと移って行った。
そして、私は長く勤めていた仕事を辞めたことを期に、このパソコンスクール(正確にはその頃は専門学校になっていたけど、専門学校生よりパソコンを学ぶ社会人の方が多かった)の職業訓練を受けることにした。
最初にあいさつに出てきた人は、当時、丸い写真の中に収まっていた人より若かった。名字が同じだから、息子なんだろなと思った。
次に、丸い写真の中の人も出てきた。
「私が一番」という、なかなか言えないことを言う「自信家」だったけど、それを聞く大人たちは、斜めに構えていた。
この人の講義は、昔話が多く、自分がいかにしてこうなったかを語るのみで、メモをとる気が失せた。
それでも、この人は、そんなことお構いなしの、ある意味「すごい人」だった。
気付けば丸い写真には、この人だけでなく息子も写るようになった。
写真で自分を売り込むのが好きな親子だなと思った。
訓練をうけた後、私は、この学校に引っ張られて、仕事をさせてもらうことになった。
その内情はと言えば、代がわりしつつあるにもかかわらず、父親は、いつも「権力者」だった。
私はそんな親子と、仕事をした。
やっぱり写真好きな親子だと思った。
特に「権力者」は、それ以上の「権力者」と写真に収まることを好み、それをステータスのように語っていた。

私がその職場を去って間もなく、「権力者」は、体調を崩し、いよいよ一線を退くことになった。
「私が一番」だった「権力者」に老後が訪れた。

今日
丸い写真で出会ったその人は、写真の中でのみ生きる人になった。
四角いフレームに収まったその人は、初めてまあるい笑顔だった。

拍手[1回]

PR
お名前
タイトル
メール(非公開)
URL
文字色
絵文字 Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメント
パスワード   コメント編集に必要です
管理人のみ閲覧

カレンダー

12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

最新コメント

(02/03)
(02/03)
(01/30)
(01/29)
(01/29)

最新記事

(01/09)
(12/29)
(12/24)
(12/20)
(12/08)

プロフィール

HN:
kumkum
性別:
非公開

ブログ内検索

アクセス解析

ブログの評価 ブログレーダー

<< Back  | HOME Next >>
Copyright ©  -- Bitter Cafe --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Material by もずねこ / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]