Bitter Cafe
苦くて渋くて辛くて酸っぱい日記
あたしはアジサイ、名前はアナベル。
いつもやることが大雑把なこの家のご主人様が、ホームセンターで鉢植えのあたしを買って、庭の適当なところに、植え替えてくださった。
それ以降、あたしは、毎年咲いてる。でも、ご主人様が植え替えてくださった場所では、どこかの悪い人が、庭の外からあたしをちょん切って持って行ってしまったものだから、ご主人様が怒って、庭のお手入れの人に別の場所に植え替え命令を出していた。
その結果、南側の日当たりのよい場所で、ますます、あたしはたくさん咲いた。たくさんだから、あたしではなくあたしたち。(私たちではなく、あたしたちって感じ)
でも、あたしたちはみんな花が大きいわりに、身体がスリム。そんなわけで、雨が降ると、頭から水をかぶって重たくなって、みんな地面に寝そべってしまう。
それを見たご主人様は、「まったく自分のバランスを考えることのできない、バカなやつ」だと、あたしたちのことを言う。
なんですってぇ、だったら、頭がでかくても、持ちこたえてやろうじゃないの。
ってことで、今年は、ずいぶん頑張ってる。一部寝そべってるけど、ほとんど、凛と立っている。ざまーみろ。
そういえば、ご主人様は、この間、テレビで、アジサイの専門家の番組を一生懸命見ていた。それによると、あたしたちアジサイは、ほとんどの種類がむせかえるような濃い匂いがないし、人間にとっては問題のない毒があるから虫もつきにくいし、肥料もいらないし、時差式で次々咲くから、長く楽しめるらしい。それを見た雑なご主人様は、これほど便利な花はないと、満足している様子だった。特に虫嫌いなご主人様にとって、大層喜ばしいことのようだ。
これからも一生懸命咲いて、寝そべらないように努力するから、ご主人様も、もうちょっと「丁寧な人」になってくれるといいと思う。
PR